現在コーヒーは、約45か国から輸出されています。コーヒーの原産地は、赤道をはさんで南北緯25度の地域に集まっており、この地帯をコーヒーベルトと呼びます。以下にコーヒー豆の産地の特徴を記します。
東にザンビア、南にナミビア、北にコンゴ民主共和国と隣接する共和制国家です。第二次世界大戦後に植民地となり、ポルトガル人のプランテーションによりコーヒーが栽培され、最大の輸出品となり、独立前は世界でも有数のロブスタ種コーヒーの生産国でした。1970年代には20万トン以上の生産を誇ったものの、独立とともに、農園主がいなくなり、そこで働く人もいなくなってしまい、2007年には2000トンにまで減ってしまいました。現在は、国家的にコーヒー栽培に力を入れようという動きも見え始めています。
西アフリカにある共和制国家であるベナンは、天然資源や地下資源に乏しい国ですが、港湾サービス業や農業が盛んです。プランテーションにより綿花、コーヒー、アブラヤシなどが栽培されています。
東にタンザニア、北にルワンダ、西はコンゴ民主共和国に隣接した中部アフリカの国家です。1930年にベルギー人によってコーヒー栽培がはじめられたブルンジは、標高1800mの高地があり、高品質なコーヒーの生産でも知られています。9割の国民が農業で生計を立てており、中でもコーヒーは最大の輸出品です。ブルンジのコーヒーは、綺麗な酸味をもち、くせが少ない味わいが特徴です。
西にナイジェリア、北東にチャド、東に中央アフリカ共和国、南東にコンゴ共和国、南にガボン、南西に赤道ギニアと隣接した共和制国家です。ドイツの植民地を経て独立し、カカオ、コーヒー、バナナなどの農産物を輸出し、1970年代には原油を産出し、経済的な成功を収めました。しかし、その後、原油価格や農産物の価格低迷に伴い不況に陥りましたが、また盛り返しました。カメルーンにおけるコーヒーは、8割方がロブスタ種で、残りの2割がアラビカ種です。インドネシアのジャワ島で栽培されていたものが持ち込まれたジャバが有名です。
北東にスーダン、東に南スーダン、南にコンゴ民主共和国、南西にコンゴ共和国、西にカメルーン、北にチャドと隣接する、アフリカ中央部の国家です。ダイヤモンドやウラン、金を産出し、綿花やコーヒーを輸出しています。アフリカ大陸の最貧国の一つで、1992年にピークを記録したコーヒー生産は、現在ではかなり減少しています。主にロブスタが栽培されており、イタリアなどに輸出されるほか、国内消費にも回されています。
北に中央アフリカ共和国、北西にコンゴ共和国、南西にアンゴラ、南にザンビア、スーダン、東にタンザニア、ブルンジ、ルワンダ、北東にウガンダと隣接し、西は大西洋に面する中部アフリカの共和制国家です。アフリカ大陸で3番目に大きい国土を有するコンゴ民主共和国は、1997年まではザイールという名前でした。国土の60%は森林地帯で、銅をはじめとした鉱物資源が豊富で肥沃な土地は、国内紛争がおさまれば、経済が発展するであろうことを予感させます。コーヒーの栽培もおこなわれており、1800年代後半から1900年代初頭にかけて、ベルギー、フランス、ドイツから持ち込まれたといわれています。日本国内ではまだ取り扱われていませんが、国内情勢が落ち着いてコーヒー産業が発展すれば、高品質なコーヒー豆が市場を席巻するでしょう。
中部アフリカに位置し、東にコンゴ民主共和国、北にカメルーンと中央アフリカ、西にガボン、南にアンゴラの飛地カビンダと隣接している共和制国家です。主な作物として、サトウキビ、ナンキンマメ、タバコ、アブラヤシ、コーヒー、カカオがあります。現在は内紛が続いており、経済が安定しておりませんが、国家が再興すればコーヒーの生産国として確固たる地位を築ける可能性がある国です。
西アフリカのギニア湾に面した共和国で、世界屈指のロブスタ種の産地として、国の主要産業にもなっています。西アフリカ最大のコーヒー豆の生産国でもあります。主にブレンドやインスタントコーヒーの原料として輸出されていましたが、政治的な内紛により2011年に輸出が禁止されました。
コーヒーノキが発見された、アラビカ種のコーヒー発祥の地とされています。一節では、興奮して眠れないヤギの食べたコーヒーを羊飼いが試したのがきっかけといわれています。首都アディスアベバは標高2400mという国土の大半が高地のエチオピアは、平均気温が13度前後という涼しい国です。貧富の差が激しく農業に従事しているものの飢餓で苦しむ人の少なくありません。
西アフリカ中部に位置し、赤道ギニア、カメルーン、コンゴ共和国と隣接しています。2000年~2004年にかけて世界的にコーヒー価格が下落したときに、ガボンのコーヒー農園は放棄され、近年では国が石油や鉱物資源の採掘に力をいれているため、コーヒー生産は減少していますが、スペシャルティーコーヒー市場に参入するべく、ロブスタ種の品質をあげる努力しています。
サハラ以南のアフリカの中では、三番目にコーヒー生産量が少ない国です。18世紀後半にココアと同時期にコーヒーが栽培されるようになりました。主にロブスタ種が栽培されています。1997~98年には、10000トンを輸出していましたが、その後生産量は減少していきました。
西アフリカ西端の共和制国家で、1958年にフランス領から独立しました。独立初期はバナナ、パイナップル、コーヒー、ピーナッツ、パームオイルを主要な輸出品としていましたが、その後ダイヤモンドや金、ボーキサイト産業に転換しました。1980年代初頭の国政改革の前に、違法コーヒー密輸問題が表ざたになり、コーヒー生産に大きな影響を与えました。1979年~1981年は平均で14000トンの生産量だったコーヒーは、1999年には21000トンになりました。
国土は標高1500~2000mの火山灰土質の高地にあり、キリマンジャロ山を挟み、タンザニアと隣接しています。タンザニアと同じく、キリマンジャロ山の恩恵を受けた良質なコーヒーを生産しています。1893年からコーヒー栽培に従事しており、農業省の中にコーヒー局が設けられており、国政としてコーヒー産業の振興をバックアップしています。また、世界初のコーヒー研究機関として、コーヒー研究財団(CRF)が設立されています。
フランス領のレユニオン島(のちのブルボン島)にフランスから持ち込まれたモカ種のコーヒー豆が野生化したものを、宣教師によって持ち出された品種が、ブルボン種として、マダガスカルから世界に伝播しました。その後ブルボン種は、ケニア、タンザニアなどのコーヒーの一大産地に広がりました。
タンザニアの南にあり、ザンビアやモザンビークに隣接しています。1930年代にイギリスから持ち込まれたのが始まりです。国土の大半は高地で、北部では降水量が多く、良質なコーヒーを栽培するのに適しています。主にゲイシャ種などが栽培されています。
アフリカ西海岸に位置する連邦共和制国家で、最大の都市はラゴスです。南部は高温多湿の熱帯雨林気候、北部はサバンナ気候です。コーヒーやココア、パームオイル、天然ゴムなどの農業国ですが、1956年に油田が発見されました。
ルワンダは、アフリカ大陸の中央部、赤道のやや南側に位置し、コーヒーの栽培に非常に適した環境を有しています。そのおかげで現在では、コーヒーは輸出売上のトップを占める重要な農作物で、外貨獲得・現金収入の源となっています。アフリカでは初めてのカップオブエクセレンスの開催国にもなり(2008年)、高品質なコーヒーの生産国として認識されるようになっています。
インド洋に面した国で、国土の大半が海抜1000m強の高原で、サバンナ気候というコーヒー栽培に適した環境を有しています。また、北部のケニアとの国境ではキリマンジャロ山がそびえたち、コーヒー豆の名門ブランドとしても有名です。主にアラビカ種が栽培されています。1890年代に、東アフリカを支配していたドイツによってコーヒーノキが持ち込まれ、プランテーション化されたことが、コーヒー栽培の始まりです。
西アフリカの南北に細長く国土を持つトーゴには、丘陵地や山地があり、コーヒー豆の生産に適した土地があります。コーヒーや綿花、ココアなどの農業が輸出額の30%を占める、世界最貧国の一つと言われています。
中央アフリカの高原地帯に位置するウガンダは、ケニア、スーダン、コンゴ共和国と隣接し、ナイル川の水源としても有名です。ウガンダでは、コーヒーが輸出の6割以上を占めており、アフリカ大陸においては、エチオピアに次ぐ輸出量です。
ウガンダのコーヒーはほかの作物と共生して栽培する方法をとっており、また農薬を使わない有機栽培を行っています。
ロブスタ種の栽培が多く、ブレンドやインスタントに用いられています。アラビカ種は、世界でも特級品とされており、高値で取引されています。
タンザニア、コンゴ、ジンバブエなどに隣接しているザンビアは、日本の2倍の国土と世界でも低い人口密度の国です。ザンビアには三大瀑布の一つ、ヴィクトリアの滝があり、その名を冠した「ヴィクトリアフォールズ」という豆が有名です。
ザンビアは、1978年にケニアからコーヒーノキが移植され、コーヒーが栽培されるようになりました。
苦みと甘みと濃厚なコクを持つザンビアのコーヒーは、飲み終えた後の余韻も楽しめます。
ハイパーインフレの国として有名なジンバブエは、アフリカ南部に位置し、東部の山岳地帯は、良質なコーヒーの産地になっています。
ジンバブエのコーヒーは、苦みも少なく、優しいまろやかな味わいが特徴です。特にサリンバ農園が有名で、良質の酸味にナッツのような香ばしさを楽しめます。
世界で6位のコーヒー生産量のインドは、日本ではあまり輸入されていないので、知られていません。しかし、17世紀からコーヒーの栽培が始まり、今ではインドではロブスタ種とアラビカ種が同程度栽培されています。
インドでは、コーヒーの生産は、森林農法で有機栽培されています。ロブスタ種の最高級品「ロブスタカピーロワイヤル」など、品質の高い銘柄があることでも有名です。
ジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島などでコーヒーが栽培されています。インドネシアの有名なコーヒーには、「マンデリン」や「トラジャ」があります。
主にロブスタ種が栽培されており、ブレンドに用いられます。また、アラビカ種も栽培されており、マンデリンやトラジャがそれにあたります。ジャコウネコが食べたコーヒー豆のうち、未消化で排泄されたものは、コピ・ルアクと呼ばれ、高級品として扱われています。
パプアニューギニアは、原種のティピカ種や、アラビカ種など良質なコーヒー豆の産地として知られ、世界中に輸出しています。有名なところでは、シグリ農園などがあります。特徴は、やさしい苦みと甘み、そして深いコクです。
かつて世界有数のコーヒーの生産国だったフィリピンは、生産量が減り、次第にコーヒーの輸入国となっていきました。しかし、リベリカ種のバラココーヒーや、アラビカ種のベゲットコーヒー、ジャコウネコの糞からとれる未消化のコーヒー豆のコピ・ルアクなど、フィリピンはおいしいコーヒーの生産地としても有名です。また、ブレンド加工用にロブスタ種も栽培しています。
タイでは、非合法の麻薬の栽培地域として知られていた「ゴールデントライアングル」と称される地域に、コーヒーノキを植えてコーヒー栽培をすることで、治安の悪化や貧困化を防ぐプロジェクトが発足しました。
タイの北部ではアラビカ種が栽培されており、有機栽培で生産する農家も少なくありません。その特徴は、香り高く、甘み、酸味、苦みのバランスが優れています。
また、タイには、象にコーヒー豆を食べさせ、糞として出てきたコーヒー豆を使用する「ブラックアイボリー」という銘柄があり、高値で取引されます。
アジア第2位のコーヒー産出国であるベトナムは、19世紀に植民地化されるとともに、コーヒーの栽培も始まりました。現在ではアラビカ種も栽培していますが、もともとロブスタ種が栽培されており、国内消費には今でも用いられています。
ベトナムのコーヒーの特徴は、強い苦みです。そのため、そのままでは苦すぎるので、ミルクなどを混ぜて飲むことが多いようです。
1729年にコーヒーノキが持ち込まれたのが初めです。コスタリカではアラビカ種が栽培されており、そのほとんどがカトゥアイ種とカトゥーラ種です。また、品質が下がることを避けるために、ロブスタ種の栽培は禁止されています。
コスタリカのコーヒーの主要な産地は、タラス、トレスリオス、セントラルバレー、オロシ、ウェストバレー、ブルンカ、トゥリアルバなどがあります。
コスタリカでは、国を挙げて環境への配慮をしており、そのことが、高品質なコーヒーを生み出すことにつながっています。
コスタリカのコーヒーの特徴は、程よい酸味と香り、濃厚なボディです。
キューバでのコーヒー栽培は、1747年ごろ、スペインからの移民がコーヒーノキを持ち込んだのが初めでした。かつて奴隷によってプランテーションを行うための土地として利用されたキューバでは、シエラ・マエストラ山地においては、コーヒーのプランテーションが行われるようになりました。
キューバのコーヒーの特徴は、苦みや酸味といったくせがなく飲みやすいところにあります。有名なものでは、「クリスタルマウンテン」があり、ジャマイカのブルーマウンテンにも引けを取らない品質の高さを誇ります。
日本ではあまり知られていませんが、18世紀半ばにコーヒーノキが移植されて以来、ドミニカでは主要な輸出産品です。主に山岳地帯でアラビカ種が栽培されており、その品質の高さは、ブルーマウンテンにも似ているものもあるほどです。
産地としては、ノロエステ、シバオ、シエラオクシデンタル、シエラセントラル、シエラスール、ネイバ、バラオナの7地区が有名です。
ドミニカのコーヒーの特徴は、酸味と甘みが醸し出すクリーンな甘酸っぱさと、それを邪魔しない渋みのバランスの良さです。
エルサルバドルのコーヒー栽培は、1863年にコーヒーノキが移植されたことをきっかけに始まりました。ほとんどの品種はアラビカ種で、有名な産地としては、「サンタアナ州」「ラリベルタ州」「サン・サルバドル州」「ウスルタン州」があります。
エルサルバドルのコーヒーは、生産した標高によって3つの等級に分類され、高地になるほど良質とされています。
エルサルバドルのコーヒーは、酸味と甘みがつよく、苦みの弱い、さっぱりとした後味が特徴です。
古代マヤ文明が栄えたグアテマラは、中米においてはメキシコに次ぐ生産量を誇ります。国土の南部には火山が多く、恵まれた気候はコーヒーの生産に適しています。グアテマラでは珈琲の栽培は、標高の高い斜面で行っており、標高によってコーヒー豆の等級を七段階に設定しています。
グアテマラのコーヒーは、バランスのとれた甘みと力強いボディの味わいを楽しめます。
北米にキューバ、西にジャマイカと接するハイチは、これらの国が誇る高品質のコーヒーに負けず劣らずの産地として有名です。その9割方はヨーロッパに輸出されるため、日本国内ではあまり見かけることはないようです。
ほとんどはアラビカ種が栽培されています。また、貧しい小規模農家が生産しているために、農薬を使わない有機栽培が多く、精製は手作業で行うことで、高品質という定評があります。
ハイチのコーヒーは、甘みと苦みが少なく、あと味がさっぱりしたマイルドな味わいが特徴です。
国土の1/3が標高1000mを越す山岳地帯にあり、高温多湿の気候も相まって、コーヒー栽培に適した環境を有しています。
ホンジュラスのコーヒーの特徴は、芳醇な香り、クリアな味わい、フルーティーな酸味のバランスの良さが挙げられます。
1494年にコロンブスによって発見された島国のジャマイカは、国土の80%が山地で、かの有名なブルーマウンテンを有します。
ブルーマウンテンは、肥沃な土壌、日中の寒暖差、適度な雨量、標高800~1200mという、良質なコーヒーを栽培するための条件が整っています。そのバランスよい風味は、最高級品としてキングオブコーヒーの名をほしいままにしています。香りが高く繊細な味が特徴で、ほかの香りの弱い豆とブレンドされることもあります。
くせのないバランス感のあるブルーマウンテンは、日本人好みであるため生産量の90%は日本に輸出されています。しかし、日本に輸入されるブルーマウンテンは、標高の低い地域で栽培されたものが多く、本来のブルーマウンテンは生産量が低く、入手するのは困難な豆と言われています。
ラテンアメリカにおいて、ブラジル、コロンビアに次ぐコーヒー生産国のメキシコは、世界でも有数の産地です。国土の大部分が標高1000m以上に位置し、コーヒーの栽培に適した高温多湿の環境ですが、農家の規模が小さいため、一般的なコーヒーよりも取引価格が高い有機栽培のコーヒーを生産する農家が増え、オーガニックコーヒーの生産量では世界一を誇るようになりました。
アラビカ種を中心に生産されており、特にオアハカ、チアパス、ベラクルスが生産地として有名です。中でもベラクルスは高級品として扱われています。
メキシコのコーヒーは、酸味と甘みが強く、苦みの弱い、柔らかさとすっきりしたあと味が特徴です。
中米で最も国土の広いニカラグアは、北はホンジュラス、南はコスタリカに接し、中心に山脈が縦走しているため、土壌は肥沃で雨量も多く、コーヒー栽培には恵まれた土地といえます。
有名なコーヒーの産地としては、ヌエバ・セゴビア、マタガルパ、ヒノテガなどがあり、特にヌエバ・セゴビアは品評会においても高い評価を得ています。ニカラグア産のコーヒーの特徴は、柔らかく、強い甘みがあり、酸味も適度で、フルーティーなところは、バランスの良さを好む日本人向きとも言えます。
コスタリカ、コロンビアと隣接するパナマでは、高地では輸出用にアラビカ種が生産され、低地では国内消費用にロブスタ種が生産されています。パナマにおけるコーヒー産業は、輸出総額の2%を占める重要な役割を担っています。
パナマのコーヒーは、甘みと苦み・酸味のバランスがよく、ナッツ系のフレーバーが特徴とされています。
パナマを代表するコーヒー豆は、ゲイシャ種で高級コーヒーとしてもてはやされています。このゲイシャ種は1960年代にエチオピア→コスタリカ→パナマという過程を経て持ち込まれました。ゲイシャ種は生産性が低く、コーヒー産業が熱を帯びた時期には、栽培する農家が減ってしまいましたが、それでも残った農家が生産を続けているうちに、ゲイシャ種の品質の高さが認められ、今日の評価を得るに至りました。
ペルーとの国境に存在するチチカカ湖からもたらされる湿度と気温が、ボリビア産のコーヒーの源泉です。有名な産地として、コパカバーナがあります。適度な酸味とコクで、飲みやすいコーヒーとして親しまれています。
言わずと知れた、世界最大のコーヒー豆の産地です。国土面積は日本の約23倍で、国土の60%以上が高原地帯です。コーヒーの生産はミナスジェイラス州が全体の50%以上を占めています。1727年にコーヒーノキが初めて移植され、1761年にリオデジャネイロに移植後、欧米の需要増大に伴いコーヒーの生産量が拡大し、1850年に世界最大の生産量を誇るようになりました。
世界全体でコーヒー豆は約840万トンの生産量がありますが、ブラジルはそのうちの1/3、約250万トンを生産しています。
ブラジルコーヒーは、果肉がついた状態で天日乾燥し、脱穀機で内皮までまるごとむきとる、非水洗式の処理(unwashed)を行うのが一般的でしたが、徐々に水洗して果肉を除いてから乾燥する方式(full-washed)も採用されるようになってきました。また、水洗してから外皮のみを除去して、内皮がついたまま乾燥させるsemi-washed方式もあります。
full-washedの方が、unwashedよりもよい品質になりますが、製造工程に手間がかかります。semi-washedだと、full-washedよりも手間がかからず、品質が比較的安定しやすいため、full-washedに近い価格を設定することができるメリットがあります。
ブラジル産のコーヒー豆の銘柄は、「ブラジル」「サントス」などと呼ばれます。サントスとは、ブラジルの輸出港である「サントス港」に因んでいます。
ブラジルで栽培されている品種は、アラビカ種とカネフォラ種ロブスタの2品種ともありますが、主にはアラビカ種が栽培されています。
コーヒーのほか、エメラルドやコカインの産地としても有名なコロンビアは、1840年代にコーヒーの栽培が始まりました。やがて、ククタ周辺で栽培が拡大し、コロンビアの主産業となりました。その後、アンティオキア地方がコーヒーの最大の産地となり、今では、コーヒーの産出量はブラジルに次いで世界2位になりました。このように、コーヒーはコロンビアにとって、外貨の獲得手段として大きな役割を担っています。
コロンビア産のコーヒー豆の特徴は、強い甘みとまるい酸味です。有名な銘柄に「エメラルドマウンテン」があります。これは、コロンビア国立コーヒー生産者連合会の鑑定士の検査に合格したものだけに与えられる称号でもあり、コロンビア産のコーヒー豆の全体の1%しか認められません。
北はコロンビア、南はペルーと隣接している赤道直下の国で、ガラパゴス諸島もエクアドル領です。国の中央を通るアンデス山脈から東側にロブスタ種、西側にアラビカ種が栽培されています。
エクアドルでは有機栽培が盛んです。コーヒー豆は70%が水洗式で精製され、ブレンド用に用いられることが多いようです。
エクアドルでのコーヒー栽培は、一緒にバナナやアボカドなども植えることで、生態系を守るとともに、不作の年であってもほかの作物で補えるようにしています。また、一緒に作物を植えていることで、コーヒーのフレーバーに、他の作物の香りや味わいが加わるという恩恵もあるようです。
日本からの移民も多いパラグアイでは、マテ茶が好んで飲まれます。コーヒーも生産していますが、あまり有名ではないようです。パラグアイのコーヒーは、ブラジルとの国境付近で栽培されており、水洗式と乾式両方で処理をしています。パラグアイでは、サトウキビを主要な作物としているため、コーヒーにも大量の砂糖を入れて甘くして飲む習慣があるようです。
1970年代にコーヒー生産のブームが起こりましたが、1980年代初頭には衰退しました。しかし、1980年代後半には再び生産されるようになりました。
1730年にコーヒーが持ち込まれ、1960年代までは、コーヒーが主な生産物で、コロンビアなどと同程度の生産量でした。1890年代には輸出総額の80%をコーヒーが占めるまでになりました。しかし石油が産出されるようになるにつれ、コーヒーの生産は落ち、現在では、年間で6万トン程度を生産しています。しかし、石油がいずれは枯渇するものであることを考え、政府は再びコーヒーの栽培に注目をしています。
主にアラビカ種が栽培されており、ベネズエラのコーヒー豆のうちマラカイボでとれるものは品質の良いものとされています。マラカイボは国の西側、コロンビアとの国境近くにあります。コーヒーの銘柄としては、「ククタ」「メリダ」「トゥルヒロ(トルヒーヨ)」「タチラ」「カリペ」「ボコノ」などがあります。
ベネズエラのコーヒーの特徴としては、酸味が少なく甘みがある、ということです。