カフェインレスコーヒーとは、カフェインが含まれていないコーヒーのことで、デカフェ(decafe)、カフェインフリーとも言われます。カフェインレスコーヒーは、カフェインを含んでいるコーヒー豆からカフェインを除去する方法と、カフェインを含まないコーヒーノキを栽培する方法の2種類があります。
カフェインを含んでいるコーヒー豆からカフェインを除去する方法としては、有機溶媒抽出法、水抽出法、超臨界二酸化炭素抽出法、液体二酸化炭素抽出法があります。
有機溶媒抽出法とは、世界初のカフェイン除去方法で、1906年にドイツで考案されました。コーヒー豆を有機溶剤につけることで、カフェインを分離し除去します。しかし、日本では薬品を使うことは食品衛生法に抵触するため、このような方法でカフェインを除去したコーヒー豆の輸入は禁止されています。
水抽出法は、1940年代に考案された方法で、真水とフィルターを用いてコーヒー豆からカフェインを除去する方法で、薬品を使わないために安全性が高いとされてる反面、風味が落ちてしまいます。
超臨界二酸化炭素抽出法は、1970年代に考案された方法で、二酸化炭素を超臨界状態にして、カフェインのみを除去する方法です。カフェインのみを除去するために、風味が損なわれず安全性も高い反面、コストがかさみます。
液体二酸化炭素抽出法は、超臨界二酸化炭素抽出法よりも、さらに香りや風味を損なわない方法といわれており、クロロゲン酸の損失も少なくなります。
コーヒー豆からカフェインを除去する過程で風味が損なわれる問題を解消するために考えられたのが、最初からカフェインを含まないコーヒーノキ、いわゆるカフェインレスコーヒーノキの栽培です。カフェインレスコーヒーノキの生育には、人工交配によるものと、遺伝子組み換えによるものが研究されています。
人工交配による成功例は、2004年のブラジルにおいて、カフェイン含有量の極めて少ない品種の栽培の報告があります。アラビカ種の亜種であるムンドノーボ種で、カフェイン量もデカフェの基準を満たしていましたが、カフェインと似た作用を持つテオブロミンの含有量が多いために、完全にカフェインレスコーヒーを実現したとはいえません。
遺伝子組み換えによるカフェインレスコーヒーノキの研究は、2003年に日本で栽培されています。しかし、このカフェイン量は欧米における「カフェインレスコーヒー」の基準を満たしておらず、また、アラビカ種よりも味が劣るロブスタ種であったこともあり、完全な成功とはいえません。
一般的に、カフェインレスコーヒーは、カフェインを除去する過程において、コーヒーの持つ脂溶性成分、水溶性成分も失われ、独特の風味が損なわれてしまいます。それでも、カフェインレスコーヒーは、カフェインを避けたいがコーヒーを楽しみたい人の需要があり、妊婦や授乳中の女性、カフェインアレルギーや、カフェインによる興奮作用を避けたい人などが飲用します。